飛騨御坊・高山別院照蓮寺・真宗大谷派 岐阜高山教区 高山教務支所

ひだ御坊一口法話

2022年10月14日

小原 正憲 (專念寺住職)

第91話 怨霊

 日本人の心の奥底、原風景には、恨みを抱いて亡くなった人や、非業の死を遂げた人の魂は、死後「怨霊」となって人々に厄災をもたらすのではないかと「怨霊」を恐れてきました。そして恐れるがゆえに、なんとかしてその厄災をもたらす魂を「鎮魂」しようと考えました。そうして生まれた鎮魂方法が怨霊を祀る御霊信仰なのです。

 平安時代、菅原道真という方がみえました。醍醐天皇のもとで右大臣まで登り詰めた非常に優秀な人でした。ところが、あまりにも優秀だったがゆえに、時の権力氏族である左大臣の藤原時平の恨みを買い無実の罪を着せられ九州の大宰府へ左遷されます。それから二年後、道真が亡くなると京の都で異変が相次いで起こるのです。政敵藤原時平の突然の病死、皇太子、皇太孫の相次ぐ死、そして御所に雷が落ち死傷者が出るという大事件が発生します。相次ぐ禍は道真の祟りだと考えられました。なんとかして道真の怨霊を鎮めなければならない。そう考えた朝廷は彼の左遷を撤回し官位を元に戻してお詫びするとともに「天満宮」を建て道真を「天神」として祀ったのです。今は学問の神として祭られています。

 そこで旧統一教会に触れてみましょう。教会は「先祖解怨」という言葉を使い「何代か前の先祖の怨霊が助からず恨みを抱いて、あなたの不幸の原因になっています。それを解怨するためには多額のお金を献金し、霊感商品を買いなさい。そうすれば先祖解怨して禍は取り除かれ「地獄」へは落ちないでしょう」と人間の弱い処に付け入るのです。しかし相手側に問題がありますが、私たちの心の中にも問題はあります。それは先祖を右往左往させるのです。都合によっては、良い時は先祖のお陰、悪い時は先祖が悪いと。また、弔辞などでも言われますが、「安らかにお眠りください」。後には「どうか私たちをお守りください」と寝させたり起こしたり先祖も大変です。亡くなった先祖は「浄土」「彼岸」に還浄しておられますので迷いません。迷うのは生きている私たちです。私たちが先祖を都合により迷わすのです。可愛い孫やひ孫に祟りますか。

 彼岸も近づきます。亡き人を偲び報恩すると共に、真なる教えを聞いていきたいものです。

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