2022年6月3日
橘 出 (久唱寺住職)
第73話 目の前の人を愛すること
今、尾崎豊の「COOKIE」という曲が再注目されているそうです。
「新聞に書かれた人脅かすニュース 正義や真実は偽られ語られる 人の命がたやすくもて遊ばれている」と歌は始まります。
最後は「僕らにできることは目の前の人を愛することだ」というメッセージで結ばれ、それが「戦争反対!」と声高に叫ぶよりも、普通の生活をしている多くの人たちから共感を得ているようです。
2月にウクライナ侵攻が始まり、テレビは連日破壊された街や泣き叫ぶ母親の姿を映し出しています。「仏教とは、嫁姑や親子の問題から国と国の争いのような大きな問題まで課題にするのです」とある先生から伺ったことを思い出しました。
人間とはどこまで愚かなのでしょうか。まさに「常没の凡愚・流転の群生」といわれているとおりです。人間はその時々の状況によって善悪の基準が変わるくせに、その中でどこまでも自己正当化しようとします。
しかし、阿弥陀様さまはどんな時代のどんな存在であっても平等に救うと誓っておられます。願いに生きるとは、仏様の願いを我が願いとして生きるということではないでしょうか。すべての命を救いたいという仏様の願い、私はその願いに生きたいと思います。
仏様の智慧にふれると、私の迷いが断ち切られ新しい生がはじまるといわれます。私自身が立ち帰るべき姿は、「人間は過ちを犯し、間違う存在なのだ」ということではないでしょうか。