2021年12月1日
北條 秀樹 (了泉寺住職)
第47話 ばけもの
「化け物です」
あるインタビューでの「美輪明宏とは何者か?」との問いへの回答。答えているのは、歌手、俳優、演出家である美輪明宏さん自身です。何ものにも負けない笑顔で、にやっと微笑みながら答えられました。「理解に苦しむものはみんな化け物扱いですからね。」
インタビュアーは更に問います。「怖いものはない?」
美輪さんは、「怖いもの、何があるだろう?怖いもの…」と少し考えられ、
「人間ですね」と、一言。バッサリ、一刀両断で。
そして美輪さんは問い返されます。
「どうして、人間だけは、画一的で『同じでなきゃいけない』みたいな思いをするんでしょうね?皆さん」「それ、傲慢ですよね?」と。
そう、私たちは今の時代、いえ、以前からだったのかもしれないけれど、「同じほうがいい」ということが、いつの間にか肌に染み込んでいました。もちろん、他の人と一緒であるとことでの安心感を得られる事も多いし、何かの選択では、正しい選択である可能性も高くなるのは事実でしょう。
しかし、昨今、「同調圧力」などという言葉も巷で聞かれるようになりました。同じ方が良い、でなく、「同じでなきゃいけない」。さらに言えば、自分とは違うもの、自分と違う考えは、美輪さんの言葉をお借りすれば、私たちが勝手に生みだしている、「化け物」であり、排除の対象、攻撃の対象。近年、SNSという武器を手に入れてしまった私たちの中では、そんな、「私」とは違う何かへの攻撃や排除が、日常的に起こるようになってしまっているように感じます。
「バラバラでいっしょ」この言葉は、私たちが1998年、蓮如上人という方の五〇〇回忌に当たってテーマにした言葉です。バラバラでいい、皆それぞれ違う。でも、怖くない、皆いっしょ、という呼びかけです。
コロナ禍で様々な分断が生まれてしまっている今だからこそ、この、「バラバラでいい」ということを、改めて大切にしたいと思うのです。