2021年6月14日
三島見らん (吉城組 西念寺)
第24話 「お・も・て・な・し」?
「良かったら、食べてー」少しキーの高い声が玄関先から聞こえてきた。
そう、うちの寺の近所にはお裾分けをしてくださる方がいる。
だいたい「我家の味」というのはあるが「他者家の味」というのは未だかつて聞いたことがない。
しかし、私にはある。唐揚げ、切り干し大根の煮たやつ、高菜の炒め物、ネギの味噌揚げは夜のアテに最高だ。
息子はポテトサラダが好きで子供に戻ったように「美味い!旨い!」と連呼しながら毎回食べる。
「ふーん」と横目でその様子を見る。作り方を聞いてやってみたが評判が悪かった。
料理が少し得意な分、悔しい。駄目押しに「やっぱ、おばちゃんのやつの方が、うめぇわ」だ。
思えば私が小さい頃、近所に同級生の女の子がいて良く遊んだ。その子の家へ行くと
お母さんがパンの耳を使った揚げ菓子を出してくれるのが楽しみだった。
砂糖がたっぷりとまぶしてあって、揚げたてで熱々。そうっと持ち上げ頬張る。
香ばしさとザクザクのコラボ。好きすぎて自分からおねだりしたこともあった。
その家族はいまでもすごく身近に感じられる存在だ。今でも町なんかでその子に
バッタリ会ったりすると、あの揚げ菓子と共に「懐かしい」感情が湧き起こってくる。
それはきっと、その子の家の味を一部でも知っているからなのだろう。
昔インドにいたお釈迦さまも、招かれたところでお食事を振舞われた話が結構多い。
一緒に食事をすることでその家庭の味を知る、また家族の関係性も見えてくる。
すべてを通して「ひとりの人」に出遇っていかれたのだとつくづく思う。
コロナが終わったら「お裾分け運動」をやろうと思う。滝川クリステルよ、
誰もこないオリンピックで「お・も・て・な・し」はできないぜ。
今からの時代は「お・す・そ・わ・け」にチェンジだ。