2024年10月1日
竹田 雅文 (東等寺住職)
第155話 諸仏を称讃する
2023年3月25日から4月29日まで京都の本山・真宗本廟で、宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・ 立教開宗八百年慶讃法要が厳修されました。
その記念事業として「阿弥陀堂門」の修復工事が2021年9月1日から始まり、天井裏には屋根を支える四本の柱の上の切り口に、各それぞれ木箱が据付けられており、蓋を開けると、折本の『仏説阿弥陀経』が各1帖づつ安置されていることが発見されました。
これを聞いたとき、まったく知らなかった驚きと同時に普通の山門ではないことを知らされました。この事は宗門内では、あまり知らされていません。
二十代の頃、友人のお寺で、仲野良俊さんの阿弥陀経講座が毎月開かれており、参加していました。
講座終了後に仲野先生を囲み、お酒を飲みながら先生の話を聞くことが楽しみでした。
あるとき、講座終了後、先生の座敷に参り、正面に座ったとき「君の諸仏は誰か」と聞かれました。突然の事で黙っていると、つかさずすぐに「君の諸仏は誰か」とするどい声で聞かれました。先生は沈黙の後、しばらくすると「うん、わかった」と云われ、その日は先生との会話も無く、お酒も飲まず友人と先生をホテルまでお送りして帰ったのでした。
その日は、特に力を入れて緊張感ある講義が語られており、先生の中では、本堂でのお話しが終わっていたのではなく、「諸仏称讃」を憶念され座敷までつづいていたことを帰ってから気づいたことでした。
その後、何年か後に、先生が亡くなられたことを知ったとき、阿弥陀経講座でのそのときの講義が想い起こされよみがえりました。それは仏説阿弥陀経には、「六方段」からはじまる阿弥陀仏の功徳(本願念仏の真実)を一切諸仏が讃歎・称讃する、その信心を勧められています。
私にとっての諸仏(先生・善知識)は、仲野先生であり、先生からの問いかけを通していただくことができたことです。
本山の阿弥陀堂門は四脚門形式と称され四本の柱を主軸に成り立っています。
その四本の柱の上に『仏説阿弥陀経』が安置されていることは、『仏説阿弥陀経』により門が、すべての人に開かれてあることをあらためて受け止め直し、仲野先生をとおして諸仏の存在を知らされた『仏説阿弥陀経』を今年もお彼岸に拝読したことであります。