飛騨御坊・高山別院照蓮寺・真宗大谷派 岐阜高山教区 高山教務支所

ひだ御坊一口法話

2023年2月10日

森 恒河 (秋聲寺住職)

第109話 認め合う世界

『ウサギとカメ』というお話をご存じでしょうか。

 ある日、ウサギとカメは競争をすることになりました。ゴールは山のてっぺんです。ウサギは持ち前のスピードで山を登ります。途中で後ろを振り返ると、カメはまだスタート付近をノソノソと歩いているのが見えました。ウサギは「カメさんは、まだあんなところか。少し休憩しよう」と、その場で寝てしまいました。カメはノソノソと山を登ります。ゆっくりとした歩みですが気づけばゴールです。寝過ごしてしまったウサギは、カメに負けてしまいました。という話です。

 この物語が伝えたいことは、ウサギは怠けていて負けたから怠ける者になるな、とか、カメの様に地道にコツコツやれば結果が出る、という事だと聞いてきました。確かにそういった教訓のような意味もあるでしょう。しかしそれだけではありません。他者を認めていく世界が表現されていると思います。

 蓮如上人の500回忌のテーマが「バラバラでいっしょ 差異(ちがい)を認める世界の発見」というものでした。差異を認めることは、そのままの相手を認めていくことです。誰とも比べられない、そもそも比べる必要のないその人自身に出会っていくことです。しかしこの差異を認めるということがどれだけ難しいことか、、、 なぜ難しいかといえば自分を中心にするからです。あの人よりどうだ、この人よりどうだと言ってばかりです。他者と何かを競うことが悪いことではないと思います。しかし必ずそこに相手を認めるということがなければなりません。ウサギにはウサギの、カメにはカメの歩みがあります。私たち人間も同じです。全ての人にそれぞれの歩みがあります。物語の最後にカメは言います。「ウサギさん、一緒に走ってくれてありがとう」ウサギは「こちらこそありがとう」と返します。

 お互いに他者を認めあうことで、それぞれがそのまま輝いていける世界が開かれるのでしょう。

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