飛騨御坊・高山別院照蓮寺・真宗大谷派 岐阜高山教区 高山教務支所

ひだ御坊一口法話

2022年12月16日

鍋山 大輔 (寳圓寺住職)

第101話 過去に生かされ、未来へ生きる 〜紅葉から学ぶこと〜

 秋が深まり山の景色が赤、橙、黄色と賑やかになってきました。普段見慣れている常緑樹の緑も、いつもより映えて見えます。皆さん、今年の紅葉はいかがですか。私は、日々少しずつ鮮やかになっていく色合いを楽しんでいます。しかし、毎年冬が近づくにつれて色がくすみ黒ずんでくると、何だか落胆してしまいます。気温が安定せず最初から色のくすみが多いと「今年はダメだなぁ」と言ってしまいます。

 山の木々からすると迷惑な話ですね。紅葉は、木々の生命維持の一つの現象です。日照時間が減り生み出すエネルギーの量が少なくなり、春に向けて体力を温存する過程で葉の色が変化していきます。紅葉は、春夏秋冬を通して私たちに生命の力強さを教えてくれているのです。

長い生命活動の一場面を切り取って、勝手に良し悪しを価値付けてしまう。「日々を懸命に生きる」という姿ではなく、周りから見て目立つことに対して価値づけをしてしまう。我々の日常を思い返すと、このような姿が多くあるのではないでしょうか。『頑張ったね』と相手を認めるのではなく、『こんなことで?』と休もうとする相手を快く思えない「私」。相手に対してだけでなく私自身が休むことも許せない「私」。紅葉を生み出す日照時間の減少のように環境に応じて自分をコントロールしているだけかもしれないのに・・・・。紅葉のように自分の色で輝く時があるはずなのに・・・・。

「私一人」だけでは、私の良さも相手の良さも見えにくい。「私―あなた」という違う人間がつながって初めてお互いの良さが見えてくるのではないでしょうか。たくさんの人間が喜び合い憎しみ合い日本の歴史を作ってきました。生きることの意味や大切さを教えてくれるのは、人間の生きる姿そのものです。私達が何気なく過ごしている日常生活で感じたり気づいたりすることが集まって歴史となり、未来の人々にとって生きる導きの一助となっていくのだと思います。過去に生かされ、未来へ向かって生きる。皆さん今日一日を自分らしくお過ごし下さい。

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