飛騨御坊・高山別院照蓮寺・真宗大谷派 岐阜高山教区 高山教務支所

ひだ御坊一口法話

2021年5月24日

北條秀樹 (高山1組 了泉寺住職)

第21話 あんまりがんばらない、でもへこたれない

冒頭の言葉は、三年前に亡くなられた女優の樹木希林さんの言葉です。

 希林さんは、網膜剥離で左目を失明され、また2004年に癌を発症し14年に

渡り闘病されてきました。

希林さんは大変仏教に明るい方でした。ある情報誌に不登校に対する寄稿をされた際、

仏説観無量寿経というお経にある、お釈迦様と、提婆達多(だいばだった)という人物の物語について書かれています。

この提婆達多は、阿闍世(あじゃせ)という王子をそそのかし、

父である王様を幽閉させたり、また、提婆達多自身がお釈迦様を殺そうとして傷を負わせたりと、

そんな苦難をふりまく存在です。その文章で希林さんはこう書かれています。

『お釈迦様はある日気づく、提婆達多は自分が悟りを開くために難を与える存在だったんだ』と。

失明し、長い間癌を患った希林さんの、その難を受け入れていたからこその文章でしょう。

その希林さんは、亡くなられる50日ほど前に、テレビでのロングインタビューで話されていました。

若い頃からお婆さんの役を演じる中で、その年を重ねた方を演じることに苦労していた希林さんは、

年を取ったら自分は立派になると思っていたが、いざ実際に年を重ねてみたらそうじゃなかった、

煩悩の固まりであり、妬み、欲、プライド、そういうものばかりだったことがわかった。と、言われています。

そして、「どんなに不幸なものに出会っても、どっかに明かりが見えるものだと思ってる」と続きます。

私たちがよくお勤めします正信偈という歌にも、『一切群生蒙光照』(一切の生きるものは皆、

(願われている)光をこうむる)という句があります。

どんな境遇であっても誰もが救われているのだという事実を示した句、希林さんの言葉が重なります。

 

この希林さんのインタビューの最後は、このメッセージで〆られています。

「あんまりがんばらないで、でもへこたれないで」

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