飛騨御坊・高山別院照蓮寺・真宗大谷派 岐阜高山教区 高山教務支所

ひだ御坊一口法話

2023年1月20日

四衢 亮 (不遠寺住職)

第106話 友として出会う

 一年間楽しませくれたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。これは親鸞聖人の時代でした。小栗旬さんが演ずる北条義時は長寛元年(1163年)の生まれ、親鸞聖人は承安三年(1173年)の生まれで十歳違いです。また親鸞聖人は、42歳から60歳ころまでドラマの舞台の関東で生活されました。

 ドラマは面白く見られましたが、中身は源氏と平家の戦いに始まり、鎌倉の主導権をめぐるすさまじい殺し合いです。刀と弓で全て決着をつける時代です。

 そうした時代を反映してか、親鸞聖人が現在の茨城県に住んでおられたころ、親鸞聖人の教えをたくさんの人が聞いて心惹かれていく様子を見て、自分たちの立場が危うくなると考えた山伏が、親鸞聖人の命を折々狙った事件がありました。その山伏は、明法坊という名で伝わっています。明法坊はそれが縁となって、親鸞聖人の話しを聞く人になります。

 親鸞聖人は、明法坊が亡くなられた後の手紙に、明法坊について「かつてあった自身の悪しき心を思い返して、同じく教えをいただく友人やなかまに、心をこめて懇切に接してくださった」と書いておられます。自分を殺そうとした人が、一緒に教えを聞く友となってくれたことは、聖人にとって生涯の中での大きな喜びであったに違いありません。  

それは、親鸞聖人の人徳がすばらしいということではないのです。自分の意にそぐわない者に恨みを懐き、それがだんだん積もれば、相手を殺してでも自分の都合を押し通そうとする心根は明法坊だけでなく私にも在る。だからこそ、私たちの中にある罪業性を余すことなく知らせ、共に目覚めよと呼びかける本願の教えを一緒に聞いて確かめていく人に明法坊がなってくれた。そのことが聖人の喜びなのです。

いかなる人も見捨てない教えによって、敵対した人とも友として出会うことができた。みな同じように平等にもらさず友として通じ合える。それは今、世界中が願っていることではないでしょうか。

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